space-pal 情報メール   2009/06/09 瀬戸際に構えるぎょしゃ座エプシロン星 著者: アラン マクロバ−ト 出典: スカイ アンド テレスコ−プ 2009年2月号 pp68-71 27年で初めて、この裸眼で見える恒星は、明らかにされていない、 何か暗いものによって食されるところである。 冬の最も明るい星座の一つで、今の夕方の高度が高い所で、何か暗くて、 謎めいていて、長らく待ち望まれた事が起ころうとしている。今年の後半、 カペラ近傍の馴染みある3等星であるぎょしゃ座エプシロン星は、独特の 食現象に近いものを開始するはずである。 他の食連星と異なり、ぎょしゃ座エプシロン星の光は、伴星によって 遮断されるのではなく、明らかに何か巨大な暗くてしかも非常に細長いもの によって遮断される。しかもそれは、中央に穴が開いている。  更に、この暗い天体は、ある食から次の食でその輪郭を著しく変化して いるのである。  ぎょしゃ座エプシロン星は、地球から約2000光年先にあるF型の超巨星で、 太陽光の13万倍の光を放っている。長い時間に渡る暗い天体の部分食は 27.1年周期で起こる。エプシロン星は、普段2.9等級で輝く、カペラ近傍の 「子供達」として知られる3星の内で最も明るい(他の2星は、ゼ−タ星と エ−タ星である)。しかし、7月ないし8月に始まって、エプシロン星は、 徐々に減光し、3.8等級まで下がる。これは、明るさを僅かに半分以下失う 事になる。光度は12月までに最小になるであろう。仮に過去の例が参考に なるとすれば、2010年夏に幾分明るさを取り戻し、そして最小光度に再び落ち、 2011年5月頃に通常の明るさに復帰するであろう。1821年に最初にドイツの 牧師のヨハン フリシュがこの減光に気付いて以来、天文学者達は、 エプシロン星の本質に当惑して来た。しかし、直近の1982年−1984年の食で、 天文学者達は、観測機器を投入してエプシロン星で何が起こっているかについて 結構十分な考えを得るに十分な詳細なエプシロン星系を観測した。暗い食を 引き起こす物体は、その幅に比べてかなり長いようである。主星のF型超巨星の 直径より数倍長い。しかし、その物体は非常に狭くて、物体が主星を横切る時、 エプシロン星の表面より半分以上しか遮断しない。このような物体の唯一の 有意味な対象は、伴星の周囲を周回する塵と粗石の不透明な円盤である。 この伴星は、明らかにエプシロン星よりずっと小さくて、暗い。  ここまでは良いが、事態はそんなに単純ではない。27.1年軌道の間の主星の 視線速度変化が示唆する所では、伴星は、エプシロン星自身とほぼ同じ質量で ある(約14太陽質量)。だから、なぜ伴星は、主星と同じ明るさでないのか? 伴星は、完全に円盤内に隠されているであろうか?その考えの問題は、円盤は 食の真ん中で増光を引き起こすエプシロン星の光を通す空いた中心を持つ事である。 だから、なぜ我々はそこで、円盤の中心星を見る事ができないのであろうか?  ある提案では、伴星自身が二重星であるとする。7太陽質量の2星は 14太陽質量の一つの恒星より遥かに暗いであろう。ある近接連星は、近傍に 塵と気体で出来た円盤をも保持しているかもしれない。そうして、泡だて器状に 中央の開口部を空け、円盤の物質を中心星に向かって流れるのを止めて、 消えるのを抑えている。  天文学者達は、実際に青白色のB型の恒星(または二つの恒星)の微小な 光がこの系からの全光に混ざっていると言う、分光的証拠を検出している。 この光は、円盤で隠された中心星(ないしは連星)から吹き出る恒星風に よって現れた反射光であるかもしれない。  この説明は何ら、食から次の食での食の変化する形状を説明していない。 食中心での増光は比較的新しいようである。過去の二三の食以前での増光の 証拠は殆ど無い。何十年の範囲で円盤の開口部は何らかによって広げられて いるのであろうか?ある仮説では、巨大惑星が円盤の内側の縁を急速に 変えているとしている。  そして、食の周期である27.1年は不変である一方、食の経過時間は 変化している。各食は、それの前の食より僅かに短くなってきている。しかし、 光度の落ち込みと復帰の速度は速くなっている。あたかも、食を起こす天体の 端はより鈍くなって来ているか、恐らくは、端がぼやけてきているか鋭くなって 来ている。その代り、F型超巨星自身、収縮しているのかもしれない。  明らかな事は、このF型恒星はいずれにせよ変化している事である。この恒星は、 0.1等級の範囲で不規則に何らかの原因で変動していて、その周期は、 丁度11年前は95日であったのが、昨年は早くなり、67日になった。 先々何が起こるかは不明である。 観測に関して 21世紀の技術を装備して、今回天文学者達は、今回で、この系を明らかに しようと決意を固めている。献身的なアマチュアは、鍵となる一役を担うで あろう。というのも、小口径望遠鏡ないしは、写真レンズにCCDカメラを 搭載した熟練したアマチュアは、これ程の明るい恒星の精密な光度測定を 行う場合、専門家達と引けを取らないからである。事実、エプシロン星は、 明るすぎて、大口径装置で敢行する事ができない。  一方、裸眼観測者達は、必ず彼ら自身エプシロンの動向を追跡したいであろう。 眼視観測では、何ら装置を必要としないし、目を暗闇に合わせる必要もない。 下図に示す、比較星図を使って出来るだけ注意深くエプシロン星の光度を判定 するだけである。エプシロン星とその比較星は街の中心の薄暗い場所からでも 十分見える明るさである。カペラは、観測する上で、明るい道標となるであろう。  ぎょしゃ座は北半球、中緯度の観測者にとって、毎年5月まで夕方に見る事が 出来る。7月の終わり頃には明け方前に観測可能になって来る。  今は、今後多くのニュ−スをもたらすであろう恒星に馴染む時期である。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− アラン マクロバ−トは、S&T編集委員に参加直後、前回のぎょしゃ座 エプシロン星の食を通しで観測した。