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東亜天文学会 名古屋支部 2008年04月12日(土) 例会模様
OAA事務局への例会報告(WORD)
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出席者 8 名 吉田孝次、清野千代子、後藤俊樹、長谷部孝男、大倉正敏、岡本貞夫、木村達也、池村俊彦
日時 2008年04月12日(土) 14:00〜16:30
場所 名古屋市 西生涯学習センター 第3集会室
1.流星2点TV観測結果報告(岡本貞夫)
岡本、上田が観測を行い、上田が、分析とりまとめたものです。
2004年〜2005年にかけて行った流星のビデオカメラによる二点観測から得た、
13の流星群の分析結果について
上田昌良(日本流星研究会)、岡本貞夫(日本流星研究会)
WGN13meteor_abst.docWORD原文
概要
私たちは、6mmF0.8レンズ(写野56゜×43゜)、カメラ(WAT-100N)を使用して、
2004年4月から2005年12月まで連夜、流星の自動ビデオカメラの
2点同時観測を行いました。
上田(大阪)は426夜、3623時間で、6341個の流星を得ました。
岡本(愛知)は409夜、3543時間で、5939個の流星を得ました。
私たちがこの装置で得られた最微等の恒星は約4等級、最微等流星は、
約2等級でした。
上田が、これらを整理分析し、
2点、同時観測で得られたものを測定、計算し、1521コの流星軌道を得ました。
また、13の流星群の輻射点、輻射点移動、および軌道要素を算出し、
IMO眼視観測ハンドブック中の軌道要素と得られた軌道要素とを比較してみました。
その結果観測精度の範囲内で類似した値となっていることがわかりました。
ところどころに集まった点があるところが、主要流星群の輻射点です。
質疑 (池村)撮影カメラの解像度はどのくらいですか。
(岡本)3'角程度です。
(吉田)IMOのデータは眼視観測であれば離心率は1として扱われている筈ですが、数値が入っているので、
数の少ない写真観測から求められた値と、眼視観測から求められた放射点移動の値を使っていると
考えられますね。
(岡本)2点撮影の流星の交叉角度が小さいと、輻射点位置の誤差が大きくなり、
それが速度の算出誤差となり、軌道要素の離心率に影響し周期yが
大きくなり、周期aに影響が及び誤差となってくるものと思います。
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2.天体の写真紹介(木村達也) (画像をクリックすると原画像(3872×2592)を表示します。)
17P/Holmes彗星その後の姿、37の数字のように見える星団イリジウム人工衛星などの写真を
紹介されました。
NGC2301
2008/02/11 00h15m58s〜00h32m00s exp2m30s*1 2m00s*3 4コマコンポジット D16cm F3.3
NGC2169
2008/02/10 23h55m58s〜24h11m00s exp2m30s*3 2m00s*1 4コマコンポジット D16cm F3.3
この2コマは、2月の例会で滝さんが紹介されたものです。
撮影時のモニター画面で「37」の数字の並びがみえて、わくわくしました。
17P
2008/02/10 21h39m59s〜21h54m03s exp2m*4 4コマコンポジット f200mm F4
右が北になります。 透明度はあまりよくありませんでした。
IRIDIUM 95
2008/02/24 19h11m34s exp20s f24mm F5.6 予報中心時間の10秒前より露光
衛星の姿勢が正確に予想されていて、光はじめる時刻がたいへん正確に予報されており、
予報に基づいて撮影しました。
イリジウム衛星の写真を披露する木村さん。 (白いのは天井の照明が反射したもの)
(質問 岡本) まるで流星そっくりに写っていますが、一瞬でこのように光るのですか。
(答 木村) 徐々に明るさを増した恒星状のものが、ゆっくり南に移動しながら光って、そのうち30秒、1分の後に
夜空に消えていくという見え方です。流星のような高速ではありません。
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3.日本天文学会100周年記念、切手(後藤俊樹)
まだ郵便局に行けばあると思います。興味のある方ぜひ入手してください。
参考(1978年に発売された東京天文台100年記念切手)
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4.旧暦について(後藤俊樹)
旧暦について詳しく書かれている本を見つけました。
「日々是好日」
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5.続、春分の日、閏秒について(池村俊彦)
初めて買った1967年の天文年鑑に、このように書かれていました。
暦表時は次のように定められていた。
o1900年の初め近くで太陽の幾何学的平均黄経が279゚41'48".04となった瞬間を起点
とし、この時を暦表時で1900年1月0日12時とする。
oこの瞬間における回帰年の31556925.9747分の1を1秒と定義する。
これは、ニューカムが研究して発表したものだと記憶しております。
これに基づき、歳差による天球座標変化を固定せず、そのときの春分点を決定し、
その位置を0゜として、太陽の位置を多くの観測機器により得た観測値から算出し
15゜刻みで正確にその黄経位置に太陽の中心が通過する日時を算出し、
日本時間において通過する時刻を含む日を24節気として暦が作られます。
その24節気をもとに月の新月から新月ほ一ヶ月としてあてはめたものが旧暦といわれる
もので、正確には、太陽太陰暦です。
昨年12月の忘年会で長谷川一郎先生が享保暦から暦が変化した理由を説明されましたが、
享保以前はこの太陽の位置を算出する時に天球上を太陽が等速に動くものとして太陽位置
を算出し、24節気を決めていました。
太陽は等速ではなく遠日点付近の7月ころは遅く、近日点付近の1月ころは早く移動します。
享保暦からはそれを考慮して24節気を決めるようにしたため、2日程度の差が生じ、太陰暦
の閏月設定が 変わってくることがありえた、というおはなしでした。
さて、天文年鑑の3月20日春分の日をよく見てください。
3月20日14時48分春分(太陽の黄経が0゜になる)と書いてあります。
4月 4日18時46分清明(太陽の黄経が15゜になる)と書いてあります。
そのほかの24節気もすべてこのように書いてあります。
これにより、春分の日など24節気は、太陽黄経により決めていることが良くわかります。
また、(日本時間で)数秒の差で前日になったり、翌日になったりということがあり、
外国の暦とは一致しない場合があります。
現在の暦 グレゴリオ暦は世界共通ですが、24節気は日本固有のものであるといえると思います。
蛇足 祝日は、暦とは別物で、時の権力者や、政治によって決められるので、
体育の日、敬老の日、などは法律に従って決められます。
ただし、春分の日、秋分の日は、24節気つまり、太陽の位置により決定されると法律により
決められているため、ラッキーマンデーにはなりません。
国民の祝日とは関係のないですが 節分は、立春の前日です。
これは、太陽の黄経が315゜を通過する日が立春で、その前日が節分ということです。
暦の上では春とか、夏とか、また、立春、立夏 について。
その季節の気温は全く考えないで、太陽の南中高度だけを考えます。
3月20日の春分 太陽の黄経度0゜ これが、春のまんなか、春を二分する日 春分です。
6月20日ころ、夏至 太陽の黄経度90゜ これが夏の真ん中の日です。
この中間の
5月5日ころ 立夏 太陽の黄経度45゜ この日からが夏
8月7日ころ 立秋 太陽の黄経度135゜ この日からが秋
つまり、暦のうえでの夏は、太陽高度が高い時期 ということになります。
暦の上で夏は 5月5日立夏から8月6日立秋の前日まで
暦の上で秋は 8月7日立秋から11月6日立冬の前日まで
暦の上で冬は 11月7日立秋から2月3日立春の前日まで
暦の上で春は 2月4日立春から5月4日立夏の前日まで
ついでに 彼岸は春分の日、秋分の日を 彼岸の中日(ちゅうにち)とし、その前後3日間
合計7日間が彼岸 だそうです。
土用は、暦の上での春、夏、秋、冬、の最終18日間 がもともとのきまりだったようですが、
春の終わりの土用4月17日をみると太陽の黄経度27゜になる日を土用の入り、ここから5月4日までが
春の土用となっています。
したがって、土用は年4回あります (年4回もうなぎが食べられます。)
国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)によると
春分の日は 「自然をたたえ、生物をいつくしむ。」となっています。
(「せいぶつ」、「いきもの」、「なまもの」 どれでしょうか。 たぶん「いきもの」でしょうね。)
自然科学のお正月ですね。
私たちにとっては座標の原点 といったところです。
春分の日が 3月20日から3月23日の間でばらつきがあり、変化するのはなぜか、という疑問については
まだ解決していません。
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閏秒について
火星のCM計算の精度が5秒をめざしていることから、閏秒について調べましたので、
紹介します。
o1900年の初め近くで太陽の幾何学的平均黄経が279゚41'48".04となった瞬間を起点
とし、この時を暦表時で1900年1月0日12時とする。
oこの瞬間における回帰年の31556925.9747分の1を1秒と定義する。
この1900年1月0日が天体計算のための時刻の基点となっています。
当時は地球の自転が完全に等速であると信じられており、この1自転の1/86400を1秒
としていましたが、天体の運動が加速していく原因を調査研究した結果、地球の自転が
遅くなっていることを発見。
1900年1月0日に制定したときからの時刻が遅れた量を決定し、
1958年に原子時計をそのときの協定世界時と一致させて運転を開始し、1958年の年初は
暦表時=協定世界時+32.184秒 協定世界時=国際原子時刻 としました。
その後実際の地球の自転の様子を測定して後日、暦表時と協定世界時との誤差を発表していましたが、
天体の観測の1年ほど後に観測した時刻が決まることとなり、不便で困りました。
1972年から、1秒以内の誤差がないように1秒単位で協定世界時をあわせるということで
閏秒方式を導入し、現在に至っています。
暦表時とは暦作成のために使用される時刻という意味。
現在は 力学時 と呼ばれている。
国際原子時を補正する秒数+32.184秒 これが1900年1月0日からの累積閏秒であることがわかりました。
わたしの火星計算用の閏秒は 計算のための時刻=協定世界時+閏秒累積値
1900 JAN 1 =JD 2415020.5 TT-UTC= 0.0000000 S + (JD - 2415020.5) * 0.001 1900以前 1日当たり1/1000秒
1900 JAN 1 =JD 2415020.5 TT-UTC= 0.0000000 S + (JD - 2415020.5) * 0.001519259819 1900-195712 1957年12月まで、32.184秒を比例配分 1日当たり0.001519259819秒
1958 JD=2436204.5 TT-UTC= 32.184 + (JD - 2436204.5) * 0.001185572752 1958-196312
1964 JD=2438395.5 TT-UTC= 34.784 + (JD - 2438395.5) * 0.001830601093 1964-196412
1965 JD=2438761.5 TT-UTC= 35.454 + (JD - 2438761.5) * 0.00200 1965-196512 無理にあわせているようです。1日当たり2/1000秒
1966 JD=2439126.5 TT-UTC= 36.184 + (JD - 2439126.5) * 0.002738475582 1966-197112 もっと無理に?。
1972 JAN 1 =JD 2441317.5 TT-UTC= 42.184
1972 JUL 1 =JD 2441499.5 TT-UTC= 43.184
1973 JAN 1 =JD 2441683.5 TT-UTC= 44.184
1974 JAN 1 =JD 2442048.5 TT-UTC= 45.184
1975 JAN 1 =JD 2442413.5 TT-UTC= 46.184
1976 JAN 1 =JD 2442778.5 TT-UTC= 47.184
1977 JAN 1 =JD 2443144.5 TT-UTC= 48.184
1978 JAN 1 =JD 2443509.5 TT-UTC= 49.184
1979 JAN 1 =JD 2443874.5 TT-UTC= 50.184
1980 JAN 1 =JD 2444239.5 TT-UTC= 51.184
1981 JUL 1 =JD 2444786.5 TT-UTC= 52.184
1982 JUL 1 =JD 2445151.5 TT-UTC= 53.184
1983 JUL 1 =JD 2445516.5 TT-UTC= 54.184
1985 JUL 1 =JD 2446247.5 TT-UTC= 55.184
1988 JAN 1 =JD 2447161.5 TT-UTC= 56.184
1990 JAN 1 =JD 2447892.5 TT-UTC= 57.184
1991 JAN 1 =JD 2448257.5 TT-UTC= 58.184
1992 JUL 1 =JD 2448804.5 TT-UTC= 59.184
1993 JUL 1 =JD 2449169.5 TT-UTC= 60.184
1994 JUL 1 =JD 2449534.5 TT-UTC= 61.184
1996 JAN 1 =JD 2450083.5 TT-UTC= 62.184
1997 JUL 1 =JD 2450630.5 TT-UTC= 63.184
1999 JAN 1 =JD 2451179.5 TT-UTC= 64.184
2006 JAN 1 =JD 2453736.5 TT-UTC= 65.184
2009 Jan 1 =JD 2454832.5 TT-UTC= 66.184
2009 以降 JD 2454832.5 TT-UTC= 66.184 + (JD-2454832.5)*0.00100
2008天文年鑑321ページをみると、30年間で14秒の閏秒がはいっていますが、ここ7年ほど頭打ちになっています。
もっと長い目、100年以上の期間をみると、30年間なら11秒程度が平均的な量で、1980年から2000年は多すぎるのです。
2008天文年鑑320ページをみると、最近の月別の誤差が掲載されていますが、 負の値になっているところもあります。
このままいくと2009年にも閏秒はなくて、もしかして、マイナスの閏秒があるかもしれませんね。
2008年現在 力学時との累積誤差として65.184秒となっています。
これは、今現在の天体の位置を算出するのに、現在時刻を世界時にして、+65.184秒 した時刻を使用して
位置計算をするということです。
ただし、これは地球の外のことで、日の出時刻や地平高度などの算出では必要ありません。
NTTでも電話交換機のための時刻を閏秒でちゃんと調整しています。
これは、特定時刻を境に通話料金が変わるため、間違いが起こらないようにするためとのことです。
電話時報(117)ではピーピと鳴る音は閏秒のため1秒挿入し、不連続調整とのことです。
「だたいまから○○時○○分○○秒」をおしらせします」という合成の音声は、発生する時刻を
1000秒前から、1/1000秒づつ遅延させて、調整時刻に達すると一致させるようになっています。(連続調整)
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6.ニュートン斜鏡の製作難易度評価値の試算について(池村俊彦)
単位面積当たりの必要平面精度と面積、主鏡のF値などから、
主鏡の直径と同じ長さを接眼部へ曲げるとの仮定で、製作難易度評価の式として
評価値=φ×φ×D÷F÷F を得ました。
φ:斜鏡の短径(mm) D:主鏡直径(mm) F:主鏡口径比
●10cmF10 斜鏡の短径25mm 高橋製作所の初期10cm反射の 斜鏡の場合
25×25×100÷10÷10 = 625 (点) 長径35.3mmの範囲全面でニュートンフリンジ3本で1/8λの精度
(安物の天頂プリズムの表面精度はこの程度です。)
●21cmF8 斜鏡の短径50mm 旭精光反射の 50mm斜鏡の場合
50×50×210÷8÷8 = 8203 (点) 長径70.7mmの範囲全面でニュートンフリンジ0.95本が1/8λの精度
●21cmF5 斜鏡の短径70mm 旭精光反射の 70mm斜鏡の場合
70×70×210÷5÷5 = 41160 (点) 長径98mmの範囲全面でニュートンフリンジ0.52本が1/8λの精度
●31cmF5 斜鏡の短径62mm 反射の 62mm斜鏡の場合
62×62×310÷5÷5 = 47665 (点) 長径87.7mmの範囲全面でニュートンフリンジ0.31本が1/8λの精度
●38cmF4.2 斜鏡の短径90mm 反射の 90mm斜鏡の場合
90×90×380÷4.2÷4.2 = 174490 (点) 長径127.37mmの範囲全面でニュートンフリンジ0.26本が1/8λの精度
●38cmF6 にしたの場合
90×90×380÷6÷6 = 85500 (点) 長径127.37mmの範囲全面でニュートンフリンジ0.53本が1/8λの精度
同じ面積でも平面精度がラフですみます。
ほとんどの斜鏡はニュートンフリンジ0.2本ぐらいを目標につくられているため、
斜鏡の面不良で光学系の精度が出ないことは稀であることがわかりました。
38cm F4.2というのは、ものすごく高精度を要求される、とんでもなく困難な鏡ということがわかりました。
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7.日本天文同好会と東亜天文学会と菊岡さんと (吉田孝次)
菊岡さんの思い出についての紹介をされました。
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支部長 吉田孝次
メンバー 滝 敏美 後藤俊樹 木村達也 長谷部孝男 大倉正敏 水野義兼
岡本貞夫 平澤康男 清野千代子 池村俊彦 古田俊正 小島信久 角田玉青・・・・
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